唐人お吉のポートレート撮影をした静岡出身の写真師・水野半兵衛による撮影。欄干が斜め格子になっている。
 この写真をもとにして、フランスで日本の東海道の橋を描いた異国情緒あふれる絵葉書が作られた(下)。
 富士はいよよ堂々とし、鮮やかな緋と紫の服を着た女性が、左上からの光線に当てられ、チラチラ橋を渡っていくところである。欄干の直線に沿って視線を左へ移していくと、うっそうとした松の巨木の緑陰に、寄り添うように鄙びた茶店。店先では二人連れが雄大な富士を眺めつつ一服入れているところである。川面も澄み切っていて美しい。山紫水明が、ここでも表されている。光と影が、いささか印象派を思わせるタッチだが、西洋人の日本の風光に対する憧憬はこのようなものであったのかもしれない。