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出典 "Le Japon illustre" Aime Humbert, 1870
出版 Hachette in Paris
画題 CHANTEUSE DE LEGENDES NATIONALS
画工
画寸 159 x 237mm / 銅版画
所蔵 Ichikawa, hiroyasu

 私が旅館に誰か三味線をひく人はいないかと尋ねると、女主人は、三味線をひくことが日本における女子教育の必須課目であることを述べ、「今すぐここに三味線の先生を連れてきましょう」と付け加えた。そして、事実、また彼女は、三味線の先生で、首都の茶屋でも有名だという近所に住んでいる中年の女性を連れてきた。彼女は、われわれの勧めに応じ、洗練された礼儀作法で、机の前に腰を下ろした。この女流音楽家は、警備隊長の自動オルガンを見て、とてもすばらしい品だと感嘆した。日本音楽の音律をはっきり掴むことは困難であったが、しかし、この熟練した芸術家は、われわれヨーロッパ人の歌の調子に、自分の三味線を合わせたばかりでなく、それらのうちの若干をかなり正確に模写して見せた。(講談社学術文庫/エメェ・アンベール「絵で見る幕末日本」)

 和音階と西洋音階との出会いの記述。即興で西洋人にカラオケ伴奏をやってやり、三味線の先生の面目躍如といったところである。画題'CHANTEUSE DE LEGENDES NATIONALS'を「伝説の国民の女流音楽家」としたが、ジャポニスムの萌芽期における、日本の神秘性や文化に対する興味と幾分の驚嘆とが入り混じった表現だと思う。