山部赤人「田子の浦ゆうち出でてみれば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける」で、古来有名な名勝「田子の浦」。田子の浦は、古くは興津川から現在の田子の浦あたりまでの地域を指し、詠じた場所としては、眺望が急に開け、裾野から立ち上がる富士の雄大な景が初めて見える蒲原の「七難坂」説が有力。しかしその後、赤人は、蒲原駅(かんばらのうまや)から柏原駅(かしわばらのうまや)に官道を東下したであろうから、まさしく、このあたりの景も目にしたうえで、長歌および反歌のイメージをふくらませたと考えるのが自然ではなかろうか。


現在の田子の浦 (ほぼ同じ場所からの撮影) 平成24年11月4日