なにやら風に乗って、子守唄でも聞こえてきそうである。橋のかなたにあるものを見つめながら、やがて二人は画面の下手へとゆっくり消えていくだろう。その一部始終を、富士が温かく見守っているのだ。 中央に点々とつづく並木は、雁金堤。子守の女性の右手は水神の森のようだ。とすると、場所は、国道1号富士川鉄橋のある場所の、やや、下流側か。撮影時期は、この葉書の表面1/3が通信欄となっていることから明治40年以降大正7年以前。富士川には、それまで木橋が架かっていたが、流されては架け、流されては架けを繰り返し、ようやく念願の富士川鉄橋が架かったのが、大正13年のことであった。 |